ひとつ、ふたつ、ひみつ。

肩を抱かれて、真尋くんが誘導するままに地面を蹴る。

顔に当たる雨粒でも、火照った肌を冷やしてはくれない。

軒下(のきした)にたどり着いた頃には、大した距離もなかったくせに、すっかり息切れ。
原因は主に、隣のこの人。

「こまり、大丈夫? 具合悪いのに、走らせちゃったね。俺の肩、使っていいから」

「わ、だ、大丈夫……だよ……」

頬に触れそうになった指先から、パッと顔を(そむ)ける。
抱かれた肩はそのままで、落ち着かない。

周りを見ると、今まで青空の下にいた人たちは皆、屋根のある場所へ移動している。

「な、なんだか、変な天気だね。晴れてるし青空なのに、雨なんて」

なんとか意識を別に向けたくて、太陽の光でキラキラと輝きながら落ちてくる雨を見上げながら、私は自分の髪の毛を触った。

葉っぱに、花に雨が当たって、とても綺麗。

「なんて言うんだっけ、こういうの。えーと……」

そんな、私のひとり言みたいな呟きに、真尋くんも同じように空を見上げる。

通り雨?
天気雨?
なんか、そんな名前がついていたんだっけ。

「ああ、狐の嫁入りだね」