ひとつ、ふたつ、ひみつ。

「具合がよくなったら、一緒にご飯食べよう。今日は、平日に作ってるのよりも豪華だから」

「うん……」

額にあった大きな手のひらは、いつの間にか私の手の上に移動していた。

真尋くんは、当たり前のように私に触れてくる。
……少しのためらいもなく。

この手を握り返しても、その表情は変えてくれないのかな。
それを知るのは怖いから、行動に移すことが出来ない。

私がこのぬくもりを感じられるのは、あとどれくらいなんだろう。

──ポタッ。

思考を無理やり(さえぎ)るように、頬に冷たい水が落ちてきた。

太陽は、ずっとこちらを照らしたままなのに……。

「雨? ──あっ!」

思わず口にした時、真尋くんが私を抱き抱えるようにして、グイッと強く体を起こした。

「こまり、こっち」