ひとつ、ふたつ、ひみつ。

「近い? これが? 今日も朝まで、ベッドでくっついてたのに?」

「!!」

耳元で囁かれた言葉に、私は反射的に耳を手で押さえる。

なんか、ものすごいこと言った……!

「へ、変な言い方しないで……っ!」

「あ、こまりの顔、真っ赤だね」

「言わなくていいの、そういうのは!」

壁ドンをされながら言い争うという初めての状況も、もちろん真尋くんは全く気にしていない。

「この格好だと、こまりの困り顔もよく見えるからいいな」

「全然よくな……っ、近いってば……!」

「電車がぎゅうぎゅうなんだから、仕方ないよ」

「うう……」

仕方なくはないと思う。
だって真尋くん、自らこっちに近づいてきてるし、わざとでしょ。

綺麗な顔が近距離すぎて、両手で体を押しのけるけど、ビクともしない。

呼吸が出来ない。
ドキドキして、苦しい。

目的地までこのままなんて、心が耐えられる気がしない。