ひとつ、ふたつ、ひみつ。

目のやり場に困って、ソワソワする。

なにこれ。
目の前には、真尋くんの顔。
横を見ても、真尋くんの腕。
たまらずうつむけば、真尋くんの大きな靴。
文字通り、包囲(ほうい)されている。

真尋くんは、気に……するわけないか。
いつもの距離感が、あれなんだし。

あと、多分、真尋くんの世界には壁ドンとかいう言葉はないんだと思う。

「っ──!」

電車がガタンッと大きく揺れて、よろけた体が強い腕に支えられて、転ばずに済んだ。

「あ、ありがとう、真尋くん。ごめんね」

「危ないから、ずっとつかまってなよ」

「大丈夫だよ。それにここ、つり革遠いし」

「俺につかまればいいのに」

……無理です!

「そ、それは大丈夫……」

「えー」

「えーって、なんのクレームなの? というか、あの……、近い」

気のせいじゃない。
明らかに、さっきよりも距離が詰まっている。