ひとつ、ふたつ、ひみつ。

返事を待たず勝手にモヤモヤしている私の(ひたい)に、ぺちんと手のひらが振ってきた。
少しも痛くないけど、びっくりする。

真尋くんがこんなことをするのは、初めてだったから。

ムッとしている……というか、なんだか子どもみたいにふてくされている……?

「こまりは、俺のことなんだと思ってんの? 誰にでも言うなら、この電車に乗ってる女の子全員に言ってなきゃおかしいでしょ。俺は、こまり以外に言ってないでしょ」

「あ、はい……」

驚いて、つい敬語で返事をしてしまう。

……怒られた。
その理由が、私以外に「可愛い」って言ってないから。……とか。

つまり、それって……?

「……っ」

私は、電車の床に目を落とす。

やっぱりなんか、真尋くんってズルい。