ひとつ、ふたつ、ひみつ。

このピンクの小さい花、なんだろう。

私は完全に立ち止まって、花屋さんの前で腰を(かが)めた。

指で花先に触れてみる。
植木鉢には、『ナデシコ』の紹介文。

ナデシコっていうんだ。
可愛いな。

真尋くんにも見せたいな。
自然が好きな彼なら、きっと一緒に喜んでくれる。

ふたりで、この小さな花を育てられたら、私……──

「こまりっ!」

「!!」

あっくんが私の名前を呼びながら、駆けてくる。

「お前、振り返ったらいないから、焦っただろ。声くらいかけろ」

「あ、ごめん……、つい」

「つい、じゃない」

はぁー、と、あっくんが大きく息を吐く。

「心配してくれたんだね。ありがとう」

「するか、バカ」

バカて。