それに、本人の好みもあるしね。
今度、一緒に来よう。
それまでに、売り切れないといいんだけど。

「……」

でも、“それまでに”、真尋くんはまだこの世界にいるのかな。

マネキンのシャツの(すそ)を、キュッと握る。

季節が変わっても、私たちはまだ一緒にいる?

「いや、それは俺の好みじゃない」

「!!」

背後から声をかけられて、ぴょこんと足が地面から離れた。

相手は、もちろんあっくん。

「び、びっくりさせないで」

「勝手にびっくりしたんだろ」

私は、服をつかんだ手を背中に隠す。

「あっくん、オラオラしてるもんね。こういう落ち着いた服は似合わないよ」

「なんだと」

「いいい痛い痛い! 耳取れちゃう!」

「こまりのくせに、生意気なこと言うからだろ」

ジャイアンじゃん。

引っ張られた左耳が、ジンジンする。