屋上から見えるどの家も、建物も、暗い。

ぼやっと点のような、少しの明かりが見える家もある。
非常灯かな。懐中電灯だったり?

でも、私たちのいる場所には、誰もかなわない。

街の灯りがない分、月も星も、いつもより綺麗に見える気がする。

夜風が吹いて、ブルッと震えるのに気づいたのか、真尋くんが私の肩を抱いて引き寄せた。

「えっ、真尋く……っ」

「ごめん。俺が寒いから、許して」

「う……」

嘘だ。だって真尋くんは、震えてないもん。

暗い夜は、嫌い。
ひとりの夜は、怖い。

だけどそれは、真尋くんが私の前に現れるまでの話。

「ありがとう、真尋くん」

「いや、俺も。こんなに綺麗な星空を見たのは、初めてだ。こまりが、この場所を教えてくれたおかげだよ」

今になって、花恋の言葉を思い出す。

『こまりが一緒にいたいだけでしょ』

……うん。多分、そう。その通り。
私は、真尋くんと一緒にいたい。

今だけ、じゃなくて……。