ひとつ、ふたつ、ひみつ。

心の中を、読まれてしまったのかと思った。

「え、えー? 泣かないよ。あ、風が強くて、ホコリっぽいからじゃない? 目に入ると、痛いよね」

私はごまかすように、空を見上げる。

白い雲がふわふわとやわらかそうに流れて、形を変えていく。

真尋くんがうちのベランダに落ちてきた日も、こんな青空だった。

「それならいいけど。こまりがいっぱい表情変えるのは見てて好きだけど、悲しい顔だけは見たくないからね」

「困り顔は好きなくせに?」

「うん。俺のことで困ってるのが、可愛いから」

そうやってまた、勘違いさせるようなことを言う。

「真尋くんも、たまには私で困ればいいのに」

「こまりの知らないところで、なってるかもよ」

「嘘だぁ」

風が吹く。

自分の髪の毛が視界を隠して、手でかきあげる。

開けた先の視界には、当たり前に真尋くんの姿がある。
だけど。

このまま消えてしまう日が、きっといつか。