ひとつ、ふたつ、ひみつ。

真尋くんの手の中には、二段の重箱。
それを、くま柄の可愛いお弁当包みで結んでいる。

包みを解くと、色違いの(はし)二膳(にぜん)と紙の取り皿。

全て、昨日ふたりで買いに行ったばかりのもの。

重箱の中は、一段目におかずと二段目にはおにぎり。

「こまり、どれから食べたい? 取り分けるよ」

「えー、全部おいしそう。あ、真尋くん、はい、飲み物。ほうじ茶だよ」

「ありがとう。お茶も一緒に持ってくればよかったかな」

「じゃあ今日は、大きいタンブラーを買いに行こうよ」

真尋くんから、紙皿を受け取る。
おにぎりと、定番のウインナーと卵焼き。からあげとミニトマトに、いんげんのごま和えまで。

「んー、おいしい~」

「よかった。冷えた料理なんて、久しぶりだな」

「真尋くんのご飯は、冷たくてもおいしいね。いっぱい作ってくれて、ありがとう。こんなふうに食べるの、小学校の運動会みたい」

「へぇ、運動会ってそうなんだ?」

「うん。応援に来た家族と、グラウンドでお弁当一緒に食べるんだよ。真尋くんのところは、違ったの?」

「んー? ……うん、まぁ」

「……」

まただ。
真尋くんは、言いたくないことがある時、こうやっていつも言葉を(にご)す。