ひとつ、ふたつ、ひみつ。


昼休みは、腕の中にふたつお茶を隠して、誰にも見れないように屋上に続く階段を上がる。

教室を出る前に、「いとこくんを、絶対長岡くんに見られないようにね」と、花恋に忠告されたけど、なんで昨日から同じことを何回も言うんだろう。

というか、あっくんには昨日すでに見られてるんだよなぁ……。
真尋くんの顔がバレているだけに、なおさら校内では気をつけないと。

屋上の重たい扉を開けると、ブワッと風が吹き抜けて、思わず目を閉じた。
髪の毛が後ろに流れる。
スカートが、太ももに張りつく。

まぶたを開いた、その先には。

「こまり、授業お疲れ様」

壁に背をあずけて座っている真尋くんが、出迎えてくれた。

「もう来てたんだね。ごめん、待たせちゃった?」

「ううん、俺も、たった今来たところだから」

「そっか」

「あはは、デートの待ち合わせの定型文みたい」

「で、デートじゃないから……」

これくらいでドキッとするなってば、私の心臓!

というか、真尋くんの日本でも、このベタな待ち合わせの展開が存在してるんだ。
意外。ワープが出来るから、人を待たせることなんて少なそうなのに。