ひとつ、ふたつ、ひみつ。

ああ、もう。やっぱり、笑顔が可愛いな。

それなのに、優しい顔の裏に隠すみたいに、たまに発言が意地悪だし。

そして今気づいたけど、知らない間にマスクも取っちゃってる。どうりでかっこいいわけだ。

……マスク。

薄い不織布(ふしょくふ)をお互いの間に挟んでしたキスを、一瞬で思い出す。

あたたかくて、ふわふわやわらかくて、……唇の形も分かってしまうくらいに近づいて。

真尋くんからは見えない角度で、唇に人差し指で触れる。

全然、こんなんじゃなくて。もっと……。

勝手に、顔が熱くなる。
瞳が(うる)んでいく。

ねぇ、あれは何?

さっきまでは、聞く気でいたのに。

今はもう、勇気がなくて出来ない。

一緒に暮らしていても、真尋くんのことはよく分からない。
それは、違う世界の人だから、……だけじゃなくて。

真尋くんにはきっと、私に見せようとしない内側がたくさんある。
それが、寂しい。
そんなことを、初めて思った。