ひとつ、ふたつ、ひみつ。

触れる寸前で引いてしまった両手が、行き先を失って(ちゅう)に浮いたまま。

「んー、じゃあ、俺からする。それで、おあいこ」

「えっ」

おあいこ、とは。

「おいで」

まるで意味が分からないでいると、浮いた手をつかまれて引き寄せられ、少しの抵抗も出来ずに正面から腕を回された。

「ひぇ!? ちょ、ま、こ、こっちでは、すぐに抱きしめたりしないって何度も」

「うん」

「うんじゃなくて!」

「こまりもさっき、幼なじみくんと同じことしてたんでしょ」

「お、お、お、同じじゃないよっ!」

あっくんに触れるのと、真尋くんに触れるのじゃ、全然違う。

真尋くんだけは、いつも私の心臓の音を大きく乱すから。

「胸の音、すごくドキドキしてるね」

「だ、誰のせい……っ」

「うん、俺のせい。こまりのこの音、好き。もっと、俺のことで困ってほしい」

「~っ!」

ますますぎゅうっと強く抱きしめる力とは反対の穏やかな声が、私の心臓に話しかける。

「こまりは、俺じゃなくてもこの音を出すのかな」

「わ、わかんないよ……。まだ、真尋くん以外にこうなったこと、ないから……」

「そっか。なんでだろうね」

「知らない……っ!」

「あはは、かわいー」

いつの間にか、機嫌直ってるし。

抱きしめるその背中に、私も腕を回したらどうなるんだろう。
真尋くんも、私と同じ音を聞かせてくれる?

……それよりも先に、私の心臓のほうが爆発しちゃうかな。