ひとつ、ふたつ、ひみつ。

鍵をあけて、部屋に入る。

「ま、真尋くん? 中にいるの?」

「いるよ」

リビングから声が聞こえてきて、私は安心して扉を閉めた。

「よかった、帰ってたんだね。どこかに行っちゃったかと思って、一階まで探しに行くところだったよ」

リビングに入ると、真尋くんは買い出ししたものを片付けているところだった。

「なんで? 帰るよ。こまりが、おかえりって言ってくれたんでしょ」

「うん……」

ドキッと、胸の音が大きく響く。

そういえば、あっくんに出会ってしまったゴタゴタで、それどころじゃなかったけど。

マスク越しに、キスを……されたような。

「……」

「……」

あれ? なんで沈黙?
話を切り出しづらいんですけど。

真尋くんの世界で、唇へのキスもあいさつなの? って聞いたとして。
その返事が、「違う」だったとしたら。

それはちょっと……、ううん少し。いや、かなり。……嫌かもしれない。
なんて。