「え、えっと、あの、この人はね」

わたわたと両手をパタパタさせて、挙動不審(きょどうふしん)になりながら、必死に言い訳を考える。

真尋くんが、私と一緒にうちの前にいる理由……!? とは!?

私が目を回していると、真尋くんが私の肩をポンと優しく叩いた。

「もう鍵落とさないようにね。じゃあ」

と、真尋くんは私とあっくんにも軽く会釈(えしゃく)をしてから、エレベーターに乗り込んでいった。

鍵? 落とした? え?

「は? お前、本当に鍵失くしてたのかよ。ちゃんとあの人にお礼言ったか?」

「あ、……あー!? うん!」

そういうことか。
機転を利かせて、偶然鍵を拾って届けてくれた人を(よそお)ってくれたんだ。

途中で、あっくんの学校指定のジャージも脱いでいてよかった。