冷淡女上司を攻略せよ!~ヘタレ年下イケメン男子の恋愛奮戦記~

「き、君、暴力はやめたまえ」

俺が拳を振り上げると、田中は怯えた顔でそう言った。

「どの口が言ってんだよ。これは冬美さんの怒りだ。思い知れ!」

バキッ

俺は渾身の力で、田中の顔を殴りつけた。

すると、田中の眼鏡が吹っ飛び、田中はよろよろと床に倒れ、動かなくなった。たぶん気絶したのだろう。

それでも俺の怒りは収まらず、蹴りを入れようと思ったのだが、

「まーくん、止めて!」

と言う叫びに近い声がして、寸前で俺は蹴るのを止めた。

ちなみに、俺を止めたのは野田さんだった。

「過剰防衛であなたが捕まっちゃうから、そのぐらいにしておいて」

「わかった」

と言ったのだが、ドカドカという複数の足音と共に、二人の制服警官が来て、なんと俺が羽交い絞めにされてしまった。

「ちょ、俺じゃねえって……」

と言っても警官は放してはくれず、しかし野田さんが、

「誘拐犯はそっちの男よ」

と言ったら、ようやく俺は放された。丸眼鏡の警官は俺を向くと、

「失礼しました!」

と言って敬礼した。あんたは加トちゃんか、っつうの。


「冬美さん……」

冬美さんの左の頬は、田中に叩かれたらしく、赤く腫れ上がっていた。そんな彼女を、俺はそっと抱き締めた。

「守ってあげられなくて、ごめん」

「ううん。助けてくれて、ありがとう」


その後は事情聴取や何やらが面倒だったが、冬美さんが無事で本当に良かった。

なお、田中は冬美さんを拉致し、彼女に復縁を迫ったが、冬美さんがそれを拒んだため、彼女の顔を平手で叩いたとの事だった。

※本編はこれで終わりますが、後日談を追加する予定なので、引き続きお願いいたします。

秋風月