冷淡女上司を攻略せよ!~ヘタレ年下イケメン男子の恋愛奮戦記~

しかし、いきなり俺が行って、田中という男の住所を教えてくれるだろうか。個人情報だからと、応じてくれないのではなかろうか。

その可能性が高いと思う。しかし、事情を話せば良いかもしれない。だが、俺の話を信じてくれるだろうか。

などと思い悩んでいたら、ある事を思い出した。冬美さんが、前の会社に親友がいると言ってた事を。その親友から、田中と言う男の現状を聞いたと、言っていたはずだ。

その親友の名前は何だったろうか。確か、総務の……の、何とかだ。野中、ではないな。野島でもないか。野川でもなく……思い出せ、俺!

あ、思い出した。野田恵子さんだ。なぜかフルネームで思い出した。でかしたぞ、俺!

大手出版社に着くと、俺は受付へ走り、名乗った上で、受付嬢に総務の野田恵子さんへの面会を申し入れた。面会理由を聞かれたら困ると思ったが、俺が同業者だからか、すんなり取り次いでくれた。

野田恵子さんが不在だったらどうするか、そんな心配をしたが、すぐにその人は来てくれる事になり、俺は胸を撫で下ろした。

居ても立っても居られず少し待つと、ヒールの音を響かせながら、派手目な女性が現れた。そして、受付嬢と目配せして俺に向かって来たので、その女性が野田恵子さんだと思う。

「お、俺は……」
「お座りください」

俺はすぐに要件を言おうとしたのだが、野田恵子さんにピシャリと言われ、取り敢えず応接用のソファに座った。

野田恵子さんは、中々の美人だが、かなり気が強そうさだ。

「野田ですが、あなたは?」
「〇✖出版の北野です。冬美さんが……」

「あらま。あなたが”まーくん”なの?」
「そうです。冬美さんが……」

「冬美がどうしたの?」
「拉致されました!」

「えっ。なんで早く言わないのよ!?」

それは、あなたが言わせてくれなかったんでしょうが……