冷淡女上司を攻略せよ!~ヘタレ年下イケメン男子の恋愛奮戦記~

「私がまだ学生の時、当時の恋人を妊娠させてしまい、私はその恋人と結婚したかったのだが、父親に猛反対され、不甲斐なくも生まれた子どもを私生児にしてしまった。その子どもが冬美なんだ。冬美と冬美の母親には不憫な思いをさせてしまい、申し訳なく思っている」

「あのー、生意気な事を言いますが、冬美さんは社長の隠し子ではあると思いますが、社長が浮気して出来た子どもではないわけで、世間に隠す必要は無いと思います」

「私は隠すつもりはない。隠そうとしてるのは……」

「私よ」

冬美さんが? なぜ?

「お父さんの、社会的名誉を傷つけるような事は、何としても避けたいの。だから、まーくんもこの事は口外しないで欲しいの」

冬美さんが”まーくん”って言った時、社長は嫌そうな顔をした。ここは”北野君”が、無難だったのでは……

てな事は置いといて、

「お言葉ですが、愛人を囲む事の方が、もっと評判を落とすと思いますよ。現在進行形だし」

俺がそう指摘すると、冬美さんは小さく「あっ」と声を漏らした。俺は至極自明な事を言ったまでだが、冬美さんには意外だったらしい。

「だったら、私が人の噂話に耐え、時にはさっきみたいなお芝居をするのは、全部無駄だったって事?」

「そうだな」
「そうですね」

また社長とハモってしまった。ちなみに前者が社長で後者が俺。

「もう、二人して私をバカにして……」

「怒るなって……」

頬っぺたを膨らませた冬美さんが可愛くて、俺は彼女の頭を撫でようとしたが、社長にジロッと睨まれ、その手を引っ込めた。