「でも、実際に男に関わらないようにしてたから、そういう事になるわね。だとしたら、まーくんは例外って事ね」
なるほど。
一目惚れと言えば、俺もそういう面があったと思うんだけど……ああ、そうだった。
「冬美さん、少し訂正させてください。俺も一目惚れでした。冬美さんが家に来てくれた日に、姉貴と冬美さんが一緒に映った大学時代の画像を見せてもらったんです。
その画像の冬美さんに、俺は一目惚れでした。その画像の事は、姉貴から口止めされてたので、今まで言えなかったんです」
厳密には、姉貴が”冬美には内緒”と言ったのは、画像そのものではなく、画像を俺が送ってもらった事なんだが、まあいいか。
「”二次元の冬美ちゃん”って、その画像の事だったのね?」
「そうなんです」
「今の私はどうなの? 画像の私より、かなり劣化してるんじゃない?」
冬美さんはそう言い、意地悪そうな、あるいは悲しそうな、複雑な表情で、俺を見た。
でも、”劣化”だなんて、全く思っていない。
「そんな事、全然ないです。今の冬美さんは、少し大人っぽくなっただけで、すごい美人だし、とても可愛いと思います」
「それは褒め過ぎよ」
冬美さんは、またも複雑な顔をした。嬉しいような、困ったような、そんな表情。
「じゃあ、最後に聞くけど、髪を縛って眼鏡を掛けた私と、今の私、どっちが好き?」
「今の冬美さんです」
俺は迷わずそう答えた。
「わかった。もう、ああいうのは止めるね?」
「そうしてください」
”ああいうの”は、”虫除け”になるからそれもアリかな、なんて事も思ったが、それは口に出さなかった。



