冷淡女上司を攻略せよ!~ヘタレ年下イケメン男子の恋愛奮戦記~

俺が体を少しだけ起こし、脇に体温計を差し込んでいると、主任は俺を向いたまま、一面鏡の前の丸い椅子に座った。

ピンクのスウェットに白地のTシャツを着て、髪はサラサラで縛ってなくて、眼鏡を掛けていない今の主任は、まるで別人のようだ。

さっきは”二次元の冬美ちゃん”が三次元になったと思ったが、よく見れば”二次元の冬美ちゃん”とはだいぶ違うと思う。もっと大人だし、妖艶だ。

こんな主任は嫌じゃないし、むしろ魅力的で、ますます主任が好きになった。

「そんなに見ないでくれる? 私、すっぴんだから、恥ずかしい」

「すみません」

今の主任は、すっぴんでも綺麗だ。メイクをしたら、どんだけ綺麗になるんだろうか。

「ねえ、二次元とか三次元とか言ってたけど、どういう意味なの?」

「えっと、それは、ア……」

『アニメです』と言ってごまかそうと思ったが、主任から嘘を付く男は嫌いだと言われたのを思い出した。かと言って、主任の大学時代の画像については、姉貴から『冬美に内緒よ』と言われたわけで……

「黙秘でお願いします」という事にした。

「何それ。まあいいわ。出して?」

主任は俺に『ちょうだい?』って感じに手の平を上に向けた。

「え? 何を出すのでしょうか?」

まさか、スマホの画像じゃないよな?

「体温計。今、ピピって鳴ったでしょ?」
「ああ……はい、どうぞ」

俺は体温計を脇から抜き、主任に手渡した。