冷淡女上司を攻略せよ!~ヘタレ年下イケメン男子の恋愛奮戦記~

主任は卵、牛乳、ハム、野菜等々を次々とカゴに入れ、最後にビールの500ミリ缶を3本、カゴに入れた。やはり主任はビールが好きらしい。

主任はそれらの会計を終えると、バッグから携帯のエコバッグを取り出し、それを広げると慣れた手付きで買った物を入れて行った。その間、俺の出る幕は全く無かった。

主任がエコバッグを手に提げると、俺はそれを持つべく横から掴んだ。当然ながら主任は俺の行為に抵抗したが、何度かの引っ張り合いの末、俺が勝った。

その時、主任がぷくっと頬を膨らませたのは俺の予想外で、とても可愛いなあ、と思った。

ドラッグストアを出て少し歩くと、主任が住んでいると思われるマンションに着いた。

さすがにストーカーはここまでだな、と考えていたら、主任が俺に向けてスッと手を差し出した。一瞬、俺に握手を求めてるのかなと思ったが、もちろんそうではなく、俺が手に提げている主任のエコバッグを、『こっちに寄こせ』という意味だろう。

俺はそれを主任に手渡し、「おやすみなさい」と言った。

すると主任は、何とも形容しがたい表情で俺を見つめた。怒っているようでもあり、困っているようでもあり、やるせないような……

俺が主任の感情を量りかねていたら、

「おやすみなさい」

と主任は言い、俺にくるっと背を向け、ヒールの音を響かせながら、エントランスへ入って行った。

今夜のストーカー作戦は、もちろん成功ではなかったが、かと言って失敗の一言で済ます気にはなれず、むしろ達成感みたいなものを俺は感じた。

おーし、明日も頑張ろうっと!