冷淡女上司を攻略せよ!~ヘタレ年下イケメン男子の恋愛奮戦記~

「で? 何があったんだ?」
「昨日なんですけどー、田代さんと小会議室であの女、じゃなかった主任に抗議したんですよー」

ちなみに、田代啓介は俺のひとつ下の後輩だ。

「何をだ?」
「主任って、定時過ぎるとさっさと帰るじゃないですかー。アタシ達が残業を頑張ってるのにー」

ああ、その事か。それについては俺も思う所があるな。不公平と言うか、ずるいと言うか……

「それを二人で言ったら、主任は何て言ったと思いますか?」
「さあ……」

主任がどう答えたのか、俺は大いに気になった。

「『あなた達こそ、無駄な残業はやめて、さっさと帰宅しなさい』って言われたのよ。ちょームカつかない?」

ああ、そう来たか。でもなあ、誰も好き好んで残業するわけじゃないしなあ。

「例えば担当書籍の受注調整って、すっごい時間掛かりますよね……あ」

上原が言うように、自分が担当する本の受注を調整する作業は骨が折れる。だが俺は、上原の最後の『あ』が何を意味するかは直ぐに解った。

それは、主任も書籍を担当しているからだ。しかも、今最も売れていて受注が多い本の担当者は主任だからだ。

主任は殆ど残業せずにそれをこなしているわけで、いったいどんなやり方をすれば、そんな事が可能になるんだろうか。