……俺が、先に気づいたと思ってた。

 

 ねねのことが、
 ただの“守ってあげたい後輩”じゃないって。

 

 

 天然でふわふわしてて、
 でも気づいたら、こっちが何度も救われてて。

 

 あの子が笑えば、安心する。
 あの子が黙れば、つい目で追ってしまう。

 

 

 ——つまり、もうとっくに、落ちてたんだと思う。

 

 

 あの水をかぶった瞬間、
 咄嗟だったけど、ぜんぜん迷わなかった。

 

 なんでかって聞かれても、答えはひとつだけ。

 

 

 “好きだから”。

 

 

 誰よりも、大事だから。
 誰よりも、無傷でいてほしいから。

 

 

 今日、あいつが涙を見せそうになって、
 俺はもう、自分の気持ちを誤魔化せなくなった。

 

 

 ——絶対に、守りたい。

 そして、いつか言いたい。

 

 「ねねが好きだ」って。

 

 誰かに奪われるくらいなら、
 俺の隣で、いちばん甘えててほしい。

 

 

 そう思った今日の放課後のことを、
 俺は、きっとずっと忘れない。