今日は珍しく、全学年合同で受ける特別ホームルームがあって、
 私は、いつもとは違う教室——3年生の教室に“特別ゲスト”として混ざっていた。

 

 「……というか、なんで私ここにいるの!?」

 

 クラスの男子に呼ばれてなんとなく着いてきたら、
 気づいたら陽向先輩のクラスに座ってた私。
 でももう、席も埋まってて動けない。
 逃げ場、なし。

 

 「おい〜ねね〜、プリント配んの手伝って〜!」

 

 陽向先輩の呼びかけに、はいはいと返事して、
 私は席を立って、教卓まで歩いて——

 

 帰ってきたら、見た。

 

 私の机の上で、
 何かをヒラヒラさせている陽向先輩の姿を!!!

 

 \\それ、ラテメモ!!!!//

 

 

 『今日のラテの♡、ちょっと奏くんっぽかった(気がする)』

 

 文字の可愛さが逆に凶器。
 ほんの出来心で書いた、“誰にも見られちゃいけないあのメモ”。
 なんで落ちてんの!?!?!?!?!?

 

 

 「え、なにこれ! かわい〜〜♡」
 「“奏くんっぽかった”ってなに!?意味深すぎでしょ!!」

 

 ざわざわ……
 クラスの空気が、ざわ……ざわ……。

 

 「ねねちゃん、もしかして恋してます〜〜〜〜!?!?」

 

 「してないです!!!!!!!!!!!!」

 

 してるけど!!!!(心の声)

 

 

 そしてここからが、地獄の始まりだった。

 

 

 《陽向の暴走タイム》
 「待って。これ俺じゃないの!?
  だって♡とか、俺の得意分野じゃん??」

 

 「何その自己申告!?♡の免許持ってる人初めて見たんだけど!?」

 

 「いやもう俺がねねラテに描かれる日も近い。むしろ俺がミルク!」

 

 「うるさい、黙ってアサイーボウルでも飲んでてください!!!」

 

 

 《柊真先輩のナチュラル爆撃》
 「……ねねちゃんって、ラテみたいに甘いもんね」

 

 「こっちもなに!?甘さで殴ってくる系男子!?!?」

 

 「“奏くんっぽかった”って書いてるけど、たぶん俺の間違いだと思うよ?」

 

 「うわ〜〜〜、推理始まったぁあああ!!でも自分に都合よすぎ案件!!!!」

 

 

 《奏、登場。破壊力MAX》
 「……俺の名前書かれてるなら、もうそれでいいだろ」

 

 「いやいやいやいや!!!
  確認しないで勝手に受け入れるのやめて!?!?
  それラブレターじゃなくて買い物メモかもしれないのに!?!?」

 

 「ちなみに、俺のどのへんが“♡っぽかった”の?」

 

 「聞くな聞くな聞くなぁぁあああああああ!!!!!!!!」

 

 

 《ラスト:澪、静かなる殺意》

 

 「……みんな騒ぎすぎ。図書室じゃなくても静かにして」

 

 「落ち着ける場所が学校にない!!!!!!」

 

 

 ──こうして、
 私はたった一枚のメモで、クラス中に恋バレ未遂し、
 男子全員から勘違い爆撃されるという大惨事を経験した。

 

 唯一の救いは、先生が入ってきてこう言ってくれたこと。

 

 「青春って、いいなぁ〜(にっこり)」

 

 いや先生、これ青春というか、
 ラブコメ界の地雷原ですけど!?!?!?!?!?

 

 

 でも。
 でもね。

 

 「ねねちゃん、ラテに♡描くときは、俺の顔思い出していいからね?」

 

 そう言ってウィンクしてくる陽向先輩の顔が、
 いつもよりちょっとだけ、かっこよく見えたのは、気のせいじゃない。