なんか今日、男子たちのテンションおかしくない?
いや、私のセンサーが壊れてるだけかと思ったんだけど、
それにしたってこれは……事件だと思う。
【第一爆弾:陽向先輩、なぜか“ねねをグッズ化”したがる】
「ねねちゃん、アクスタになったら売れると思うんだよね」
「アク……スタ……?」
「うん。俺、1日1回“推し”を机に立てたい系男子だからさ。
日替わりで表情ちがうやつ出して」
「そんな毎日用意できるほど表情ないです!!」
「じゃあ俺が撮る。ねねの“困り顔”とか、超レアそう」
※→後日、本当に“ねねカメラロール”が200枚超えてた。
※→私はついに、フォルダに住む女になった。
【第二爆弾:澪くん、“観察記録”が小説化する】
「……書いてみた。フィクション」
「えっ、小説……!? タイトルが“微笑みが溢れて部室が沈む”……?」
「ねねちゃんが笑ったら、教室が溺れるって設定」
「もはや自然災害!!?」
「ジャンルは恋愛×青春×警戒区域」
「青春どこいったあああ!!?」
※→『君のとなりで酸素不足』の続編らしい。
※→文体だけめっちゃ綺麗なのが余計にツボった。
【第三爆弾:柊真先輩、さりげなく“飲み物になろうとする”のを継続中】
「ねねちゃん、今日もカフェラテだったでしょ?」
「え!? 当たってるけど、なんでわかるんですか……」
「もはや、香りでわかる。あと、歩き方」
「ラテって歩き方あるんですか!?」
「ある。今日のねねちゃん、ミルク7:エスプレッソ3くらい」
「成分比で人を例えないでください!!」
※→その後、真顔で「じゃあ俺、カフェイン担当ね」って言われた。
※→何それ、怖かわいい。
【第四爆弾:奏くん、“ねねの感情”をアプリ化しようとしてくる】
「俺さ、アプリ作ろうと思ってるんだけど」
「え、すごい!なにアプリですか?」
「ねねの気持ちをリアルタイムで通知するアプリ」
「プライバシー侵害すぎる!!!」
「通知オンにしといたら、誰がねねにときめかせたか即わかる」
「なにそれ、地味に怖い!」
「名前:『ねねバロメーター』。DL数、俺しかいなくてもいい」
※→アプリアイコン案がすでに8個くらいあった。
※→なんだろう、怖いのにちょっとときめいたの悔しい。
【第五爆弾:律先輩、“ブランケット”が進化していた】
「このあいだのブランケット、改良した」
「え……ふわふわ増えてる……!?」
「羽瀬川ねね専用。触れるだけで、ちょっと落ち着く仕様に」
「どこの癒し商品!?」
「あと、タグに名前縫った。迷子防止」
「ブランケットが学校内で迷子になる前提やめてください!!」
※→その日の放課後、職員室から「“ねね毛布”って誰の持ち物?」って呼び出された。
※→律先輩、わざとですか?
──結果。
今日の私は、
ーグッズ化され
ー小説の主人公にされ
ー飲み物の成分比で語られ
ー通知されかけて
ーブランケットになりかけた。
で、なにこれ?
“恋愛運”と“コント運”の同時当たり日?
でもさ。
わけわかんなくて、苦しくて、笑い転げたのに。
心の奥のほうだけ、
ちょっとだけ、あったかくなってた。
こんなに笑える恋なら、
もう少しくらい、振り回されてみてもいいのかもしれない。

