……どうしよう。
 私、いま——たぶん、恋してる。

 

 でもそれが誰なのかは、
 自分でも、まだちゃんと分からない。

 

 まっすぐに気持ちをぶつけてくれた人もいた。
 さりげなく触れてきた人もいた。
 ただ隣にいるだけで、心が落ち着く人もいた。

 

 誰かの名前を思い出すたびに、
 胸の奥がぽかぽかしたり、ちくっとしたり、
 ぐらぐらに揺れてしまう。

 

 こんな気持ち、
 いままで知らなかった。

 

 誰かと目が合うだけで、
 名前を呼ばれるだけで、
 ドキドキって簡単に溢れてきて——

 

 でも、その“好き”が誰に向かってるのか、
 まだ怖くて、見ないふりしてる自分もいる。

 

 ……ねえ、こんなに誰かを想う日々が続いたら、
 私、もう普通じゃいられない気がする。

 

 今日も、誰かの指が私の指に重なった。
 誰かの声が、私の名前をやさしく呼んだ。
 誰かのまなざしが、私を“特別”って言ってくれた。

 

 ——全部、うれしかった。

 

 でもきっと、私はもう知ってる。
 誰かの手だけは、
 触れられた瞬間に、心ごと持っていかれそうだったってこと。

 

 まだ言わない。
 まだ、選ばない。

 

 だけど、
 この胸の音が向いてる人に、
 いつかちゃんと、届いてしまう気がしてる。