隣の席の室井くん①



なんか、室井くんてやっぱりずれてる感のある人だ。


隣を見ると消しゴムでゴシゴシと消す室井くんの横顔が前髪の合間からチラリと見える。


思えば、この席になってからこの角度の室井くんしか見てない気がするなぁ。


窓際で風に黒髪を靡かせながら俯いて本を読んでる彼か、宙を見つめて停止している室井くんの横顔しか見てない気がする。


心配になるほど白い彼の肌が、少し傾いた夏の日差しに照らされて綺麗な輪郭を作り出す。


女のアタシでも羨ましくなるほど綺麗な肌である。


なんとなく無言になり手持ち無沙汰になったアタシは
そんな観察をしながら、目の前の室井くんの見慣れた横顔を眺めていた。


数秒無言を貫き日誌に視線を落としていた彼は
ふ、と顔を上げると



「日吉さんも可愛いと思うよ」



突然、思い出したかのようにそんなことを言い放った。



「…はい?」



突然顔を上げたのと、いきなりそんなことを言われたことに驚いて思わずそんな間抜けな声を出してしまったアタシを



「ん?」



と、不思議そうに頭を傾げて彼は見る。