「あ、そ~いえばさ、室井くんてギター始めたのって中学生の時なんでしょ?」
「そ~だよ」
「相沢くんはいつから始めたの?」
郡を抜いて実力のあるバンドのギタリスト相沢くん。
もちろんそのギターの腕もかなり定評があるっぽい。
確かに、楽器なんか全く弾けないアタシには難しいことは全然わかんないけど、その素人目にも相沢くんがかなりギターが上手いのはわかる。
「俺はね~中3の夏頃かな~」
ちなみに翔は中1の時から軽く弾けてたよ、と、付け足した。
「2、3年であんなに弾けるようになるもん?」
「そりゃあ俺ほどになれば!!!!」
ギャハハと高笑いする相沢くんを、白い目で見る。
「ヒャーハッハッハ!!冷たいよ!!視線が冷たい!!」
何がそんなに可笑しいのだろうか。
なんか変なモンでも食ったにちがいない。
ギャハハ!から、ヒャーッッ!!という引き笑いに展開した笑い声が蝉の鳴き声に対抗するかのように響き渡る。
真夏の蝉もびっくりな引き笑いを全開で醸し出しているよ。
室井くん。貴方の親友、病気だよビョーキ。
キノコかなんか食ったんだよきっと。
ひとしきり笑った相沢くんは、ヒーヒー言いながらうっすら浮かべた涙を拭った。
「中学ん頃はね~今ほど翔とはつるんでなかったんだよね」
「そうなの?」
「うん、翔くん絶賛反抗期だったから」
「反抗期?」
まさか。
あの室井くんが反抗期?
なんだよテメェうぜーんだよ!!とか言っちゃうの?
・・・あの室井くんが?
アタシの思考を読んだかのように再び笑いながら
「いや、アイツの反抗期は普通の反抗期とはちっと違うから」
そう補足した。
・・・そりゃそーだ。
そんな室井くん想像できん。
「学校もほとんど来てなかったしな~」
「え?マジですか」
「そーそー、軽~く引きこもりだよね~あの風貌でソレっていかにもじゃね?」
・・・頷いていいものか。
「家でずっとギターばっか弾いててさぁ、翔くん大好きな俺としては¨こりゃ~俺もギター弾くしかねぇ!!¨って思っちゃったわけよ!!」
¨サッカーしてればいいのに、何が楽しいのか
「じゃぁ俺も読む」って言って大して興味もない絵本開くの¨
一昨日の室井くんの話を思い出す。
幼稚園時代とホントに変わりないのね君は。
「ほんで、やってみたら思いの外ハマっちゃって~、んで今に至る!みたいな」
ヒャヒャヒャと笑いながら
簡潔にまとめた相沢くんは楽しそうに体を揺らす。
「その頃から、翔も学校くるようになってなんとか高校も受かったし、万事オッケーっしょ」
「バンドに誘ったのは相沢くんなの?」
「そーそー」
頷きながら相沢くんが目を細める。
「高校入って、やなぎんとかイッチーとかとつるむようになってバンドやろう!みたいな話が出てさぁ」
Snake Footのベースとドラムの名前が出現する。
「翔もよく練習場に引きずって行ってたのよ。アイツ放っておくと引きこもりになっちまうからさ~」
・・・強制連行してたのね。
相沢くんが、揺らしていた体を止め
「聞きたい?俺らのバンドの結成話」
と、ニヤリと笑った。
アタシはそんな相沢くんに視線を合わせたまま
「聞きたい!!」
と、身を乗り出した。
「じゃあ、暇人な日吉チャンに昔話をしてあげよう」
「暇人は余計だよ相沢氏。そしてそんな君も暇人ではないですか」
ヒャヒャヒャ!!間違いねぇ!!と笑ったあと
ゆっくりと相沢くんは昔話を始めた。
ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーー
