「まぁまぁ、気にしないで頂戴」
あはは、と笑いながらバシバシと室井くんの背中を叩くと、彼はまた
「…ごほっ」
と、むせた。
おーっと。
これじゃさっきの相沢くんと同じだよアタシ。
「ゴメンゴメン!!痛かった!?」
「いや、だいじょうぶ」
胸元を撫でて落ち着かせると、彼はまたペンを動かし始めた。
…なんだか自分がものすごく怪力女に思えてくるではないですか。
気付けば、教室にはアタシと室井くん、二人きりになっていた。
そう意識したら急になんとなく気まずくなってきたアタシは、なんとか会話を試みる。
「む、室井くんは部活とかはいってないの?」
「うん、入ってないよ」
「なんで入んないの?」
「…動いたり走ったりするの無理。溶けちゃう。それに人と必要以上に関わるのも苦手だから」
おぉ、期待を裏切らない回答。それでこそ室井くん。
「B組の相沢くんと仲いいねぇ。さっきも一緒だったんでしょ?」
「仲いいっていうか、幼なじみっていうか…腐れ縁…?」
「不思議な組み合わせだよね」
「ね」
人事のように笑う室井くんは穏やかな口調で言葉を繋げる。
…以外と会話が続くことに驚いている。
室井くんて案外話しやすいな。
一見無口そうだけれども、話しかければちゃんと返答してくれる。
とはいえ、よくよく考えてみれば一言、二言会話をしたことはあってもこうしてまともに会話をしたことはなかったなぁ。
なんて考えてると
「日吉さんも松坂さんと仲いいよね」
と、珍しく室井くんから話を振ってきた。
「さっちゃん?うん、仲いいよ」
室井くんから話を振ってきてくれるなんて初めてである。おぉ…すごいぞアタシ…ちょっと感動だ。
「さっちゃんはねぇ、美人だし可愛いし、その上頭も良くてセクシーダイナマイトでしょう!ちょっとドSなだけであとはもう言うことないよね!もはや神の領域だよね!!」
「はは、ドSなの?」
「そりゃ~ね、怒らすと怖いよ~…」
身震いして見せたアタシを見て室井くんがクスクス笑う。
「せめて、なんか一つくらいアタシにも分け与えて頂きたいよね」
とため息をつくアタシに
「日吉さんも頭良いじゃない」
と室井くんがフォローする。
…うん。貴方よりはね。
っていってもアタシも下から数えた方が早い部類ですけどね。
