隣の席の室井くん①





綺麗な明るいエレベーターに乗り込み、マンションの最上階5階を目指す。

ゆっくりと上昇しながらアタシの心拍数も上昇していく。


2、3、4、と順番に表示に色が灯り

5、のところでチン、という音と共に
ゆっくりとドアが開くと、これまた広めのフロア。



「綺麗なマンションだねぇ」


感心しながら呟くと


「そーかなぁ?」


と、興味なさそうに答える室井くん。

いやいや、かなり立派なマンションですよ。
アタシん家なんかTHE一般家庭!みたいな一軒家ですよ。

・・・もしかして、室井くんてお金持ちなんだろうか。

・・・謎だ。

部屋のドアをカードキーで開け、ドアノブに室井くんが手をかけた時


「あ、あの!」


思わず、声をあげる。


「ん?」

「や、やっぱり、お家の人とかいらっしゃられますですよね?」


いかん!日本語さえ怪しくなってきた!!
そんな明らかに挙動不審なアタシを見て、アハハと笑いながら


「あ~それで日吉さん緊張してたんだ?それなら大丈夫だよ、俺一人暮らしだもん」

「あ、そ~なんだぁ・・・なら気楽に・・・って・・・えぇっっ!!??」


思わず、廊下だということを忘れ叫んでしまった。


「あれ?言ってなかったっけ?」


コテン、と首をかしげる室井くん。


・・・き、聞いてないっす。
てか、こんないいマンションに一人暮らしって!!
どんなだよ!!

・・・やっぱり室井くんて、何者!!??



ーーー玄関を開けると
外観通り、やはり広い綺麗な部屋が目の前に広がる。

2LDKの造りの室内は、どこもかしこも新築を匂わす綺麗さで


「とりあえず座って~」

と、案内されたリビングも対面キッチンの部分を含めて恐らく15畳以上は余裕であるであろう広さを誇っていた。


・・・なんだろう。確かに広いんだろうけど
広いってゆーか、こざっぱりとゆーか


室井くんらしい
黒で統一されたカーテンやテーブルやソファー。


あとは、大きなテレビ。


・・・だけ、という
なんとも生活感のない部屋。

室井くんらしいというかなんというか、

でもさ、仮にもバンドとかやっちゃってる男子高校生ならさ、こうもっと音楽雑誌が散らばってるとか
憧れのミュージシャンのポスターがあるとかさ
楽器があるとかさ?


「ごめんね、なんにもなくて」


キッチンから、グラスに入った飲み物を両手に持ちながら室井くんがテーブルにそれを置いた。


「こ、こんな広いトコロに一人で住んでるの?」


思わず室井くんを見上げてそう言うと
少し困ったような顔で笑いながら


「必要ないよね」


と、アタシの隣に腰を下ろした。