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「なんとなくそうなるだろ~なぁって思ってたよ」
「え?そ~なの?」
放課後。
本当はさっちゃんを取っ捕まえて話をじっくりと聞こうと思っていたのだけど、夏の大会間近のさっちゃんは部活が忙しいらしく、消えるようにしていなくなった。
いつも室井くんに付き纏っている相沢くんも
知り合いのライブに行くだとかで今日は教室に姿を見せなかった。
そんなこんなで
「一緒に帰りませんか」
と室井くんが誘ってくれて今こうして駅まで歩いてるワケなんだけど。
「え?だって松坂さんって亮介の好きそ~なカンジだもん」
白いワイシャツから覗く室井くんの肌は、アタシなんかよりずっと白くて、背はそこまで高くないけれど、どこかヒョロリとした印象を持つ。
何より前髪、暑くないのかなぁ。
アタシなんか長い髪をお団子にしてたって暑いっていうのに。
「日吉さん?」
「は!いやいやいやゴメンね」
思わず、隣の室井くんを見入ってしまっていた。
いかんいかん、
日増しに変態度数が上がっていく気がする。
「さ、さっちゃんて、相沢くんのタイプなの?」
「うん」
「へ~、どういうトコロが?」
「Sっぽいトコロ」
「・・・・・・・・・」
「ちなみに亮介はドMだよ」
・・・金髪め。
ヤツはドMなのか。
確かにさっちゃんはドSだ。
「ち、ちなみに室井くんは?」
「ん~?」
室井くんが、何が?とでも言うように首を傾げた。
「S?M?」
・・・なんつー質問してるんだろうアタシ。
聞いたあとにそんな失態に気付き、
「・・・いや、やっぱなんでもない!!」
と、慌てて首を振った。
そんなアタシにニッコリと口元を微笑ませた室井くんがゆっくりとしたテンポで
「どっちだと思う?」
と、少し屈んで
アタシの耳元に低い声を響かせた。
「うひゃあぁぁ!!」
ぞくぞくぞくっと、体中が粟立って
思わず、奇声をあげたアタシを
「アハハ、日吉さんておもしろいね」
と呑気に彼は、前髪を揺らしながら笑った。
・・・・・・畜生。
普段のほほん、へろろん、とマイペースで
こんな人畜無害な目立たない格好してるくせに
この人はきっと、Sに違いない。
「む、室井くんて、相沢くんたちといつからバンド組んでるの?」
赤い顔を押さえながら話題を変えてみる。
室井くんはアタシの歩調に合わせてくれているのか
それとも普段からこのペースなのか
ゆっくりとした歩調で歩きながら思い浮かべるように少し上を向く。
「ん~とね、高校入ってからかなぁ」
「へ~、でも相沢くんとは幼なじみなんでしょ?」
「うん、幼稚園から一緒」
あの金髪と幼稚園から一緒か・・・
どんな幼少期を送ってきたんだろうな、この人たち。
「見てみたいな~」
「何を?」
「二人の幼稚園の頃とか」
なんか、想像つくような
つかないような。
