隣の席の室井くん①




唇が離れ、目の前の気配が遠ざかる。
半ば放心状態のアタシはようやくゆっくりと顔を上げると


眼鏡を外した、室井くん。
綺麗な瞳を、妖しく細めた彼が黒髪を揺らす。


「い、今・・・」


自分の唇を押さえながらアタシはきっと今、尋常じゃないくらいに真っ赤になっているんだろうと自覚してみる。


だって、唇が熱い。

頬も、首も

色んなとこが、熱い、



「日吉さんが可愛いから悪いんだよ~」



少しだけ頬を染め照れたように笑いながら
のほほん、と彼は言う。



「そそそ、そんな、急に!!び、びっくりする!!」

「いやだった?」


眼鏡が無くなると、キタローバージョンとはいえいつもよりも表情がよく見える。

時折風が吹いて、髪が揺れる度に、その綺麗な顔が髪の間から見える。

そんな綺麗な顔がショボーン・・・といったように影を落としたので


「嫌じゃない!!・・・です!!」


慌ててそう言うと


ゆっくりと顔を上げた彼が


「へへ」



と、極上の笑みを浮かべた。


・・・あぁ、このままじゃいつかこの人に殺される。
心臓がもたない。ていうか、なんかもう

イロイロ、意外だ。

なんかもう、色んなことが未知すぎるよこの人。



「あ、でも失敗した」



未知すぎる目の前の彼がそう呟いたので
思わず「え、何が?」と、聞き返してしまった。


もしかして、キスしたのを?
なんて、急に不安になる。


室井くんは、目元をこれでもか、という位に細めながら


「これじゃ、全然日吉さんが見えないや」


眉をしかめながらゆっくりと近付いてきたかと思うと


「ここまで来れば、見える」


と、


本日、二度目のキスをした。









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「・・・ふは。日吉さん真っ赤だ」

「・・・ま、真っ赤にもなりますよ!」

「可愛いなぁ」

「!!!!??な、なんか、室井くんキャラが!!」

「ん?」

「キャラが違くない!!?」

「そ~かなぁ?」

「学校ん時とかと違う!!」

「眼鏡外してる時は割と強気」

「・・・何故」

「なんにも見えないから」




どうやら、アタシの彼氏は

最強無敵の天然魅惑のボーカリストのようです。