隣の席の室井くん①




「俺、日吉さん好きだよ」

「・・・・・・・・・」

「日吉さんが俺を好きになってくれて嬉しい」

「・・・・・・・・・」

「俺、日吉さんを・・・」

「わわわ、わかった!!わかったから!!!!これ以上は勘弁してくださーい!!」


アタシは両手で顔を押さえ、その場に座り込む。
いかん!!これ以上そんな言葉を囁かれ続けたら爆死してしまう!!顔中に集まった血液が爆破してしまう‼︎


「なんで?」


不思議そうにくすくす笑いながらもアタシを見下ろす室井くん。


・・・もう、なんでこうもストレートなんだろうかこの人は。


「うれ、嬉しいんだけど!!恥ずかしくて死にそうです・・・」


アタシのそんな訴えもストレートな彼には伝わらない。


「折角、日吉さんのこと好きって気付いたんだもん。言わなきゃ勿体ないじゃん」


黒髪眼鏡のキタローバージョンな一見地味なオタク男子みたいな彼が、まさかこんな台詞を吐くなんて
数ヶ月前のアタシ…いや、数日前のアタシ、夢にも思っていないだろうよ。


そんな室井くんを好きだと自覚してからも
イマイチ、ふわふわしたカンジの室井くんと
彼氏、彼女、っていうのがピンとこなかったワケだけれど

まさか、こんなに爆弾ボーイだとわ・・・


「・・・む、室井くん・・・今だけでいいから眼鏡外しちゃいなよ」

「えぇ?なんで?」

「・・・いや、いいから」

「やだよ、何にも見えなくなっちゃうよ」

「・・・だからだよ」


きっと、夕日のせいに出来ない位に今のアタシは真っ赤にちがいない。
夏の真っ赤な太陽もびっくりな程に酷い顔をしているに違いない。

いっそ、眼鏡を取り上げてしまえばこんな顔を見られずに済むんじゃ・・・なんて、


そんなアタシを正面から見つめながらふんわりと笑った彼は


「やっぱり外そうかな」


と、甘いトーンで呟いた。



目の前の室井くんが
まるでスローモーションのような、ゆっくりとした動きでアタシに近づき座り込むアタシの手を引く。

引かれるがままにアタシの体は立たされ
気付いた時には、あっという間に目の前にあった彼の顔には眼鏡はなく、少し前屈みになった室井くんが耳元で、甘い声を出す。



「眼鏡あったら、邪魔」



視界に彼の右手の黒ブチ眼鏡が映ったかと思った瞬間ーーー







ーーーちゅ








唇に、柔らかい感触がした