「花に例えられるような女の子じゃないけどね」
苦笑いのような、照れ笑いのような
そんな笑みがでてくる。
さっちゃんにもよく
「アンタには女としての自覚が足りな過ぎる!!」
って説教をうける位だ。
「そ~かなぁ?いつも元気で笑ってて、楽しそうだよね?」
「いや・・・むしろそれくらいしか取り柄がないってゆーか」
「うん、そ~いうところが好きなんだと思う」
・・・ぴたり、と
アタシは言葉を止めた。
今、ものすごくサラリとこの人、好きって言いましたね。
「~~~~っっ」
ダメだ。
この天然ボーイに勝てません。
「あれ?日吉さん真っ赤?」
頭を傾げながら、室井くんがアタシの顔を覗き込む。
「ま、真っ赤にもなりますがな!!」
アタシは慌てて距離を取る。
このまま至近距離にいたらアタシはきっと血が顔に集まり過ぎて爆発するにちがいない。顔面血中濃度MAXだ。
「なんで?」
あぁ、もうこの人はホントに。どこまで分かってて
どこまで分からずにやってるんだろう。
「す、すき、とか急に言うから!!」
その程度であわあわしてるアタシは
いつかコレに慣れる日が来るんだろうか。
「室井くんは・・・その・・・いいの?」
赤くなった顔を押さえながら呟いた言葉に室井くんが「ん?」と首を傾げる。
「自慢じゃないけどアタシちっとも可愛くないし、特段女の子らしいわけでもないし・・・」
生ぬるい夕方の風が頬を撫で、その先の向日葵を揺らす。
その黄色い花がゆらり、と頭を動かす。
室井くんはアタシと同じようにソレを見つめながら
「うん、日吉さんがいい」
と、柔らかく笑った。
一体全体、なんで室井くんがアタシなんかを好きなのかわからないけど
昨日のライブといい、今日といい
なんだか物凄い人の彼女になったもんだと、少し不安にもなる。
「日吉さんこそ、いいの?」
隣から、ぽつりと声がしてそちらに視線を向ける。
赤い夕日が室井くんの白い綺麗な輪郭をオレンジに縁取る。髪の毛のせいで、顔の表情は全部は見えないけれどその声のトーンはどこか不安げだ。
「俺、こんなんだし。バンドなんかやってるけど学校じゃ陰気だとか何考えてるのかわかんないとか言われてるよーな奴だよ?」
・・・知ってるんですね。
アタシは苦笑いしながら室井くんの顔を見上げる。
「室井くん。君のその風貌が陰気なのは否定しようがないよ、これはもう」
「え、ひどいね日吉さん」
あははとアタシが笑うと、室井くんも笑う。
「うん、でもアタシが最初に好きになったのは¨ショウくん¨の室井くんじゃなくて眼鏡に陰気な室井くんだからなぁ」
アタシのその言葉に室井くんは目を大きく見開いた。
「っていうか、まさかバンドなんてやってるとは
夢にも思わなかったしね」
「・・・・・・」
「あ、でも!!歌ってる室井くんもカッコよかったよ!!?」
黙ったままの室井くんを覗き込むと
室井くんは眼鏡の奥の瞳を細め、嬉しそうに笑った。
