隣の席の室井くん①




プイッとそっぽを向いた室井くんが頬を膨らませる。
・・・ホントにこの人は・・・天然なのかなんなのか。

いやコレが計算だとしても室井くんのこの仕草にキュンとしてしまうコトは間違いないのだけども。


「それよりさ」


やなぎんが、ベースをコトンと立てかけると室井くんと相沢くんの元へと近付いてきた。


「2曲目、やっぱショウのギター入れた方が厚みが出ていいと思うんだけど」


スコアを手にし、ここ、と指差した部分を2人が覗き込む。


「俺もそう思うんだけどよ~」

「無理」


相沢くんの言いかけた言葉を室井くんがサラリと遮った。


「コイツがイヤだっつーんだもん」


ブーブーと文句を言いながら相沢くんがギターを手にする。


「ほら、ここんとこちょびーっとだけでいーんだって!!簡単なコードにすっからさぁ!!」

「イヤ」


室井くんは、相沢くんが適当(っぽい感じで)に掻き鳴らす指先を見つめながらもまたもや一刀両断する。


「室井くん、ギターも弾けるの?」


思わず尋ねたアタシに


「ちょっとなら」


と頷きながらも、渋い顔のまま。


「よく言うよ!!俺にギター最初に教えたのショウじゃん!!」


相沢くんの言葉に


「そーなの!!?」


と食いつくと


「でも、すぐに抜かれちゃったもん」

と、やんわりと笑いながら頭を傾げた。


「なんでイヤなんだよ!!」

「だって、ギター弾きながらだと歌詞間違えちゃうもん」

「努力次第だろー!!そんなん!!」

「俺、歌だけで精一杯」

「分からず屋ーー!!!!」

「まぁまぁまぁまぁ」


小学生みたいな言い争いをジェントルマンやなぎんが止めに入った。


「ん~、俺もやっぱ入れたいけどなぁ」


やなぎんはそう独り言のように呟くと

「日吉さんはどう思う?」

と、突然アタシに振ってきた。


「え?え!?アタシ!?」


そんな馬鹿な!!!
楽器も弾けないアタシにそんなコトを聞かれても!!
しかも、聞いたわけでもないのに分かるわけがないじゃない!!


「そうそう!!日吉チャンどー思うよ!!」


相沢くんまで便乗してアタシに意見を求めた。


「えーーー・・・・・・」


そんなコト言われたって。
・・・でも


「室井くんがギター弾いてるのも見てみたい、です」


うん、
ギターを掻き鳴らしながら歌う室井くん。
想像しただけで、鼻血モンです。


その言葉にニヤリ、と笑った相沢くんとやなぎんは


「だってよ、ショウ」

「日吉チャンがそう言ってるよ~?愛するダーリンのカッコイイ姿が見たいな❤って言ってるよ~?」



そこまで言ってない。

スコアを見つめたままだんまりしていた室井くんは
顔をあげ、アタシとスコアを交互に見ながら「ん~」と唸ったかと思うと、


「じゃあやる」


と、アッサリ承諾した。