隣の席の室井くん①



「なに?室井くん」



呼ばれるがままに駆け寄れば、室井くんは徐に髪を掻き上げゴムで前髪をピョコンと結んだ。



「~~~っっ!!」



ほおぉぉぉ!!チョンマゲバージョン!!!!
かわっ!!かわいい!!

いつも長い前髪で顔の8割が隠れちゃってる室井くんのチョンマゲ姿は貴重で、羨ましいくらいに綺麗な白い肌を惜し気もなく見せ付ける。

それだけでも既に鼻血が噴出しそうだというのに・・・



「眼鏡持ってて?」



と、いつもの必殺室井スマイルで眼鏡を手渡されたアタシは、ヨロリ、と目眩を起こしそうになった。



「わわわ!大丈夫!!?日吉さん!!」



慌てて室井くんがアタシの背中を支える。
至近距離に迫った鼻血モンの室井くんの姿にアタシは再び瞬殺されそうになる。


・・・なんて心臓に悪い顔なんだ。


長い睫毛に綺麗に縁取られた二重の瞳がアタシを真っすぐ見下ろす。

女の子もビックリなくらい大きな瞳。

でも、男の子特有の鋭さと吸い込まれそうな漆黒のソレに、なんとも無様な真っ赤なアタシが映っている。


・・・泣きたくなるぜ



「ハイ、そこのバカップル!!い~加減にしてくださ~い!!はじめま~す!!」



相沢くんがギターを掻き鳴らしながら文句を言う。


しかも、さも愉快そうに金髪を揺らしながら。
それに軽く舌打ちをしながらアタシは指定された椅子に腰を下ろした。

ふと、隣を見れば



「・・・これはたまげたわ」



と、口をあんぐりと開けてチョンマゲ姿の室井くんを見つめるさっちゃんがいた。



「んじゃ、この前の例の曲からね~」



ピンクのギターを掲げた相沢くんの言葉に彼らは頷くと楽器をスタンバイする。


ーーーーあ。

昨日の、あの顔だ。


さっきまでニコニコと穏やかな表情だった室井くんがマイクスタンドの前に立った途端にスッと表情を変える。

本当に、別人みたい。



「・・・あれ、本当に室井なワケ?」



隣にいるさっちゃんも、同じことを思ったのかそう呟いた。

室井くんだけじゃない。

馬鹿みたいに能天気に笑っていた相沢くんも

ジェントルマンな素敵スマイルを見せていたやなぎんも

・・・イッチーは変わらず無表情だけれども

皆その表情を変え楽器を手にしている。


無表情イッチーのドラムを合図にするかのように
オレンジ色の照明の下、狭い四角の防音室に
色とりどりの4色の音が響き渡った。