隣の席の室井くん①




         * * *



茹だるような暑さに耐えようやく訪れた放課後。
教室の人はまばらになりつつある。



「あれ、まだ帰んないの?」

「帰りたいのは山々なんだけれどもね・・・今日日直なんだよアタシ」

「あ、そっか。アレ?室井は?」

「相沢くんに拉致されて再び失踪」

「災難ね」



ちゃっちゃとやって早く帰んなさいよ、と残し
さっちゃんは部活へ行ってしまった。


さっちゃんは美人でセクシーダイナマイトなだけでなく、運動神経まで抜群でテニス部の次期キャプテンと言われるまでのスーパー美少女なのだ。


その上、大学生の彼氏までちゃっかりいたりして。
まさに青春謳歌してます!!といった感じ。


・・・それに引き換え



「何を書けというのか~」



未だ真っ白のままの日誌にため息を落とす
平々凡々なアタシ。

取り分け美人でもなけりゃ、頭が良いわけでもなく
部活で青春かましているわけでもない。
その上浮いた話の一つもありゃしない。

ただただ青春時代の無駄遣いをする女子高生。


…大体もう一人の日直、室井くんはどこ行きやがった。

日誌をアタシ一人に押しつけて失踪するなんて一体どういう了見なのか。


何のための眼鏡なんだ。しかも黒ブチではないか。
真面目くんの象徴じゃないか。

偏見?い~や、知ったこっちゃないわ。仕事を押しつけて失踪する方が悪い。


暑さで脳内沸騰気味になったアタシが、そんな意味不明なことを呟きながら白紙の日誌に頭ごと突っ伏したところで・・・


----ガラガラッッ!!!!


という大きなドアの開閉音が響く。

それに驚いて、勢いよく頭を上げれば



「あ、よかった、まだいた」



息を切らした室井くんが
ドアにもたれるようにして立っていた。