隣の席の室井くん①





「なぁ、室井って相沢と仲いいんだろ?室井もライブとか見に行くの?」



羽鳥くんが珍しく室井くんに話を振った。
それに一瞬驚いた顔をした室井くんは、




「俺、人ゴミ嫌いだから」




と曖昧に笑った。




「あ~室井はそんなカンジだよな。ライブハウスなんか行ったら一発で死んじゃいそう」




ケラケラと羽鳥くん一味が笑う。



・・・いやいやいや、だからこの人がボーカルですって。ステージ上で激しくシャウトしてたのは彼ですよ。皆さん。

…まぁ、まさか夢にも思わないだろうしな。

アタシも、真実を知らされるまで羽鳥くんたちと同じことを思っていたもの。


ケラケラ笑っていた羽鳥くん一味の一人と、ふ、と目が合った。



「あ、そういえば」



彼はアタシの顔を見ながら思い出したように続ける。




「俺、昨日ライブハウスで日吉さん見かけた」

「え、」



な、なんと!!!!見られていたとは!!!!
あわあわとなるアタシに彼は




「章一とステージ裏に入ってったけど、誰か知り合いでもいるん?」




章一って・・・・・・アタシを楽屋まで連れていってくれた赤い髪の男の子かな・・・

知り合いですか!!どどど、どうしよう!!
何をどこまで喋っていいんだろう!!

困り果てていると



「日吉チャンは俺に会いに来たんだよ、な?」




と、相沢くんが
助け舟を出してくれた。




「え?マジで?なんで?日吉さんと相沢ってそんなに仲良かったっけ?」




羽鳥くんが不思議そうな顔でアタシと相沢くんを交互に見る。




「最近仲良くなったんだよね~?日吉チャン」

「ね、ね~?」




ものすごく楽しそうな相沢くんとは打って変わって
恐らくアタシの顔は全開で引き攣っているであろう。



「なんで急に?」



羽鳥!!!!もういいだろーよ!!
どんだけ気になっちゃってるんだよ!!
サラッと流すとこだよ今のは!!!!




「いや~、親友の彼女ってなったら、そりゃ~特別待遇にしないとなぁ?」

「!!!!?」




相沢!!お前も何を言い出すか!!
顔を真っ赤にしながら相沢くんを睨む。




「え?なに、日吉さんって相沢の友達と付き合ってるの?誰?」


羽鳥くんのその言葉に、一瞬その場が静まり返った。
そんな中、唯一、静かに読書をしていた彼は



「・・・へっくしょん!」




このタイミングで、そんな可愛らしいくしゃみをするかね。君は。


実に室井くんらしいマイペースっぷりである。