「なぁ、室井って相沢と仲いいんだろ?室井もライブとか見に行くの?」
羽鳥くんが珍しく室井くんに話を振った。
それに一瞬驚いた顔をした室井くんは、
「俺、人ゴミ嫌いだから」
と曖昧に笑った。
「あ~室井はそんなカンジだよな。ライブハウスなんか行ったら一発で死んじゃいそう」
ケラケラと羽鳥くん一味が笑う。
・・・いやいやいや、だからこの人がボーカルですって。ステージ上で激しくシャウトしてたのは彼ですよ。皆さん。
…まぁ、まさか夢にも思わないだろうしな。
アタシも、真実を知らされるまで羽鳥くんたちと同じことを思っていたもの。
ケラケラ笑っていた羽鳥くん一味の一人と、ふ、と目が合った。
「あ、そういえば」
彼はアタシの顔を見ながら思い出したように続ける。
「俺、昨日ライブハウスで日吉さん見かけた」
「え、」
な、なんと!!!!見られていたとは!!!!
あわあわとなるアタシに彼は
「章一とステージ裏に入ってったけど、誰か知り合いでもいるん?」
章一って・・・・・・アタシを楽屋まで連れていってくれた赤い髪の男の子かな・・・
知り合いですか!!どどど、どうしよう!!
何をどこまで喋っていいんだろう!!
困り果てていると
「日吉チャンは俺に会いに来たんだよ、な?」
と、相沢くんが
助け舟を出してくれた。
「え?マジで?なんで?日吉さんと相沢ってそんなに仲良かったっけ?」
羽鳥くんが不思議そうな顔でアタシと相沢くんを交互に見る。
「最近仲良くなったんだよね~?日吉チャン」
「ね、ね~?」
ものすごく楽しそうな相沢くんとは打って変わって
恐らくアタシの顔は全開で引き攣っているであろう。
「なんで急に?」
羽鳥!!!!もういいだろーよ!!
どんだけ気になっちゃってるんだよ!!
サラッと流すとこだよ今のは!!!!
「いや~、親友の彼女ってなったら、そりゃ~特別待遇にしないとなぁ?」
「!!!!?」
相沢!!お前も何を言い出すか!!
顔を真っ赤にしながら相沢くんを睨む。
「え?なに、日吉さんって相沢の友達と付き合ってるの?誰?」
羽鳥くんのその言葉に、一瞬その場が静まり返った。
そんな中、唯一、静かに読書をしていた彼は
「・・・へっくしょん!」
このタイミングで、そんな可愛らしいくしゃみをするかね。君は。
実に室井くんらしいマイペースっぷりである。
