抱きしめられているせいで、室井くんの心地の良い声がダイレクトに鼓膜に響く。
・・・し、死ぬ・・・これは死んでしまう・・・爆死の危機だ。
「お~お~、翔もやっと男になったか」
髭パーマさんが、ベースに肩肘を付きながら爽やかな笑みを見せる。
「ヒャヒャヒャ!!だろ?最近妙に唄い方も艶っぽくなったと思ったら、コレよコレ」
相沢くんがヒーヒー言いながら、愉しそうにアタシたちを見下ろす。
すると、これまで顔色一つ変えずに沈黙を守っていたインテリ眼鏡さんが口を開いた。
「それ、ショウの彼女?」
・・・それ、って
アタシのことですか。
ーーーって!!
かかか、彼女だなんて!!そんな!!
「彼女じゃないよ」
アタシが否定するより先に、室井くんがそれを口にする。
・・いや、そうなんだけども。
彼女でもなんでもないんですけども。
そんなハッキリ言われるといくら事実でもちょっぴり切ない。
「でも俺んだから、皆は触っちゃだめ」
ちょっぴり泣きそうになっていたアタシは
その言葉に目を丸くして、室井くんを再び見上げた。
きょとんとするアタシなんてさておき
「ヒャーハッハッハ!!!な!!おもしれぇだろ!!!!?」
ヒャヒャヒャな彼が例の如くに笑い声を上げる。
・・・おいコラ!何が面白いんだ、この金髪引き笑い!!お前なんぞ引き笑いの最中に引きつけてしまえ!!
いっそ笑い死にとか幸せだろうよ!!!!
「確かに、こんなショウ見んの初めてだな」
髭パーマさんまで腹を抱えて笑う。
「え、えぇ・・・!?」
未だ全く状況が飲み込めないアタシは、室井くんに抱きしめられたまま顔を赤くしてアタフタするばかり。
「あれ?俺また、変なこと言った?」
そんなアタシを見下ろして、室井くんが頭を傾げる。
もう!!こんな状態でそんな可愛い仕草すんのヤメテ!!!!心臓に悪い!!不整脈起こす!!
「ショウ」
インテリ眼鏡さんの呼びかけに「ん?」と室井くんの視線がそちらに動く。
「お前、その子のことを好きなのか」
無表情のままインテリ眼鏡さんが、とんでもないことを言い出した。
その言葉に
「・・・・・・」
「・・・・・・」
アタシも室井くんも思わず固まる。
そして、
「・・・え?」
そう発したきり、室井くんは動かなくなってしまった。
・・・・・・てめぇ、この眼鏡
一度ならまだしも二度までも、なんて爆弾を落としやがるんだ!!
その眼鏡に黒いマッキーペン塗りたくって
タモさんみたいにしてやろーか!!!!!!
