隣の席の室井くん①


躊躇う間もなく開かれた扉の向こう


色んな楽器や機材に埋もれた狭い室内には
茶色のソファーに、ガラスのテーブル。


そして、先程までステージ上で歓声を浴びていた面々。



「スペシャルゲストで~す!!」



と、声高々に紹介されたアタシに視線が集まる。
アタシはもう、固まる以外の何者でもない。

しかし視線だけでゆっくりと室内を見渡してみる。

ガラステーブルを挟んで設置された茶色のソファーに向かい合わせで座るのは


さっきのベースの髭パーマさんと
黒髪眼鏡のインテリドラマーさん

そして一段高くなっているステージのようなところでこちらに背を向けたままヘッドフォンをしているのは
恐らく、さっきのイケメンボーカルだ。



「ち、ちょっと!!」



アタシは相沢くんの袖を引っ張り小声で叫ぶ。



「室井くんいないじゃん!!嘘つき!!」



室内には、SnakeFootの面々の姿のみで
室井くんの姿はどこにも見当たらない。



「まぁまぁ、そう慌てな~い、慌てな~い」



尚も愉快そうにニヤニヤ笑うと
ズガズガと室内に足を進め、真っ直ぐステージに向かっていく。



「おい、ショウ!」



と、背を向けているボーカリストのヘッドフォンをむんず、と掴み取り上げた。



「・・・あ、」



ハラハラとアタシが見守る中、のっそりと彼は顔を上げ無言のまま、相沢くんを睨み上げる。



「おっ前はよ~、お客様がいらしてるのに、んなモン聞いてんじゃねぇよ~」



相沢くんは遠慮なく、足で彼の背中をグリグリと踏み付ける。その足をウザそうに払いながら



「お客さん?」



と頭を傾げてゆっくりと振り返った。
そんなショウくんをニヤニヤと見下ろしながら



「そ~う!お客様だ!」



と、アタシを指差す。


矛先を向けられて思わず背筋を伸ばすアタシに
ショウと呼ばれた彼はゆっくりと視線を向けた。


白い透き通るような肌に並ぶ、無駄のないパーツ。

中でも際だって綺麗な二重の瞳を
これでもかと細め、こちらを見据える。



・・・・・・睨まれてます?



「ヒャハハ!!ごめんね~、コイツ超ド近眼なんだわ!!」



愉快そうにヒャハヒャハ笑いながら、相沢くんがアタシを手招きする。

アタシは恐る恐るそこへ近付く。

・・・っていうか!
近くで見るとやっぱり綺麗この人!!
なんだこの整った顔!!少女漫画をそのまま実写化したような反則チックな顔をしている。

いや、なんか睨まれちゃってるけどさ!!
これだけ整った顔で睨まれると尋常じゃないくらい怖いけども!!


あと数歩、というところで



「ーーうわっ!」



女の人みたいに中性的なその顔を歪ませていた彼は相沢クンに後ろに引っ張られ


ーーゴンっっ!!


というなんとも痛ましい鈍い音と共に、床に後頭部を強打した。