隣の席の室井くん①



悲鳴にも似たような歓声の中で、彼らは今日最多の4曲を歌い上げ



「あざーしたっっ!!」



という、相沢くんの野球部さながらの挨拶と共にステージ上から去っていった。



「…はぁ~…」



興奮醒めやらないアタシは、未だステージを見つめ放心状態。


相沢くん、かっこいいじゃん!!
すごいじゃん!!無駄に金髪でチャラチャラしてるわけじゃないんだね!!



「…でも」



結局、室井くんには会えなかったなぁ。




――――――

――――



「どうしよう…」



全ての演奏が終わりそれぞれが店内から踵を返す中、アタシは未だ店内をウロウロしていた。


確かに相沢くんは、ライブの後控え室に来ていいって言ってくれたけど



「一体全体、どうすれば…」



アタシの小さな呟きだけが、ざわついた店内に虚しく響く。


控え室に行くっていったってどこからどう行けばいいのかわかんない。誰かに聞こうにも見渡す限りイカツイ人達ばかりで、声を掛けるなんて滅相もない。


あからさまな挙動不審でうろついていると



「あのー」



と、背後から肩を叩かれた。



振り向くと、赤い髪の毛の同い年くらいの男の子が立っていた。



「日吉チャンってアンタのこと?」

「え、あ、はい」



頷くと、男の子はホッとしたような表情で



「相沢さんに聞いてるよ。楽屋案内するから付いてきて」



…よかった…どうやら、相沢くんが派遣してくれたらしい。


アタシは言われるがままに、その赤い髪の毛の男の子に付いて行くことにした。