隣の席の室井くん①



さっきまでステージに興味すら向けていなかった人達が、ワラワラとステージに集まってくる。耳をつんざくような歓声の中、ステージ上に現れたのは


ドラムセットの前に座った黒髪に眼鏡の
スッキリとした顔立ちの男の子と

黒いベースを手にした
緩いパーマがかかった茶髪に髭面の男の子

どピンクのギターを掲げ
観客に手を振る金髪少年

ーーーそして、無言で
スタンドマイクの前に立った男の子。


あの金髪は紛れもなく相沢くんである。


先の3組との違いは歴然としていて
観客は歓声をあげてステージに視線を送る。


……すごい人気じゃん!!



「ど~も~!!SnakeFootで~す!!」



相沢くんがいつもの調子でマイクに向かって一言発すると

わぁぁ!!と、再び歓声が挙がる。


思わず、圧倒されてしまいアタシは口をぽかーんと開けステージ上を見つめた。



「久々のライブで、大分気合い入ってまっす!!」



歓声の中、ギターを鳴らしながら慣れた調子でマイクに向かう相沢くんの横で、ボーカルの男の子が静かにスタンバイされた目の前のマイクに向かう。

ベースと、ドラムの二人もそれぞれの持ち場に付いた。



「そんじゃあ、早速一曲目いきま~す!!マイナークラウンでGhost Town!!」



相沢くんの声を合図に、ライブハウス内に

3種の音の嵐が巻き起こった。



「す・・・すご・・・」


沸き上がる場内の中、一人ぽつんと突っ立ったままステージ上を見つめる。


先程の3組なんて比べものにもならない。
比べるまでもない。

バンドの音だとか演奏のレベルだとか
そんな難しいことは全くわかんないけど

この4人が凄いことは、アタシにだって分かる。


黒髪のインテリ眼鏡の人が2本のスティックで
叩き出す複雑なリズムに乗せて、パーマに髭面の人が黒いベースの4弦を器用に操る。

相沢くんのド派手なピンクのギターは、ギュルギュルとスピード感のあるマイナーなコードを刻み、軽快にステージ上を飛び回る。


そして、ボーカル。


白い照明の下で、無造作にセットされた黒髪を揺らしながら力強い歌声を張り上げる。

眉間を険しく寄せながら
低い音域から、高い音域までを綺麗にメロディーに乗せていく。



迫力があるのに
色気があるような


言い表せないけどとても惹きつけられる歌声だ。



白い照明のせいなのか、白い肌は陶器のように透き通り、綺麗な二重の瞳が印象的なハッキリした中性的な顔立ち。


相沢くんのバンドは相沢くんを初め、綺麗な顔立ちの人ばかりだが、中でもあのボーカルの人は異様なまでに綺麗な顔立ちをして色香を振り撒いていた。


男の人の歓声に混じり、女の人の嬌声が混ざるのも分かる気がする。


「すっごい・・・かっこいい・・・」


圧倒的な技術と存在感を放って、音を奏でる4人は
この日1番の歓声と興奮を沸かせていた。