隣の席の室井くん①



流れで入ってしまったけれど、本当にここでいいんだろうか。

いや、ちゃんとチケット見せて入ったんだし
ここに間違いないんだろうけど…


薄暗く、爆音の響く店内を進んでいくと
少し広いフロアへと出る。


オレンジやピンク、青に紫、緑と
色んな色の照明に照らされた会場に、人がひしめき合っていた。

中に入ってみると、入口の所とは違い意外とアタシと同じような高校生くらいの人達がいるのも見えて少し安心する。

よかった…。あの金髪ピアスにハメられて、ここで人身売買とかされちゃったらどうしようかと思っちゃったよ。


…とは言え、
かなり心細いことには変わりない。


思わずキョロキョロと、フロアを見渡す。
室井くん、本当に来てるのかな。
逆に目立ちそうなものだけど、一向にそれらしき人物が見当たらない。

そんなこんなをしているうちに、店内が暗くなりステージ上がパッと明るくなった。


アタシはそちらに視線を移す。



「どうも~AngelJapanで~す」



ステージに現れたのは
緑のモヒカン頭の集団だった。


緑のモヒカンが4人も並び、何がどうして
Angelなんだろうか。


っていうか、どっから出てきた Japan。


申し訳ないが、Japan感ゼロである。


どうやら、相沢くんのバンドの他にも3組のバンドが演奏をするらしく、そのトップバッターがこの謎のモヒカン軍団らしい。



「じゃあいきま~す」



と、やる気があるんだかないんだかわかんないテンションでシンバルの音と共に曲が始まった。


………おぉ。コレはなんとも………。


4人のモヒカン軍団が演奏しているのは
アジアンというロックバンドの曲らしいのだが


…楽器を弾けないアタシにだって分かる。
ギターの音、それチューニングあってます?
あぁ、ドラムもただガチャガチャ言ってるだけだし


ボーカルなんて、声ひっくり返っちゃってるよ。


なんとも残念なトップバッターのNON Japanなモヒカン軍団は、特に観客を沸かせることもなく一曲だけ演奏しさっさと引っ込んで行ってしまった。


…大丈夫かよ。

兄貴がああいうからちょっと期待してきたけど
なんだかとっても先行き不安なんですけど。