隣の席の室井くん①



とにかく控えめで
可もなく不可もなく。

アタシも同じクラスになるまでその存在すら知らなかったんだけれども。


一番の謎は



「あー--!!翔!!いたいた!!」



教室に響く一際デカい声にクラスメートの視線が一斉にその主に向く。



「まぁた読書かよ~!!相変わらずもやしっ子だな翔は!!」



ヒャヒャヒャとやたら耳につく、引き笑いのような特徴的な笑い声を発しながら教室にズカズカと入ってきたのは

夏の太陽に負けない位に真っ金金の金髪頭の男。

着崩した制服に ジャラジャラと装着されたピアス
校内でも一番と言っていい程に目立つ男。


B組の 相沢(あいざわ) 亮介(りょうすけ)

風貌からして怪しげだが
天真爛漫な性格と人懐っこい顔立ちで友達も多く
校内でも目立つグループに所属する人物だ。

絵に描いたような陽キャ。
彼が陽キャじゃなければ誰を陽キャだというのかと
問いたくなるくらいに陽の人である。


そんな彼は教室に入ると
迷うことなく真っ直ぐ室井くんの席まで歩いてきて
その場で一言、二言、会話すると



「だろ!!?だから今すぐ来いって!!」



と室井くんの肩をバシバシ叩いた。


…あぁ、折れちゃう折れちゃう。

そんな細い肩をバシバシ叩いたらパキッと折れてしまうんじゃないだろうか。


アタシの心配通り、相沢くんに叩かれ軽く咳き込んだ室井くんは大きなため息と共に渋々といった様子で立ち上がり、相沢くんと一緒に教室を出て行った。



「ハタから見たら、完全に不良にカツアゲされに校舎裏に連れて行かれるイジメられっ子よね」



さっちゃんが苦笑いでその姿を見送る。


恐らく、クラスメートの誰もが毎回、同じことを思っているだろう。



「いくら幼なじみっつったって、タイプが違いすぎるでしょう」



ーーーそう。

彼は、何も今からカツアゲされに行ったわけではなく

ただ単に昔からの幼なじみで
仲が良いというだけの話なのだ。