隣の席の室井くん①



       
          * * *



室井くんを好きだと意識してから2週間経つものの、
現状は何も変わることはなく。

7月の暑さばかりがただただ増していく。

世間は刻々と夏休み間近となり、暑さでへばっていたクラスメート達も流石に浮き足立っていた。


唯一、アタシと室井くんの間にほんの少しの接点が生まれたといえば


例の、向日葵。



「今日、水あげとくね」



向日葵を水やりを、室井くんがたまにしてくれて



「ありがとう!」



そのおかげで会話が少しずつ増えていること。


そして、



「今日はなんの本読んでるの?」

「ん~…輪廻転生の思想と理論についての本」

「…………」




たまに、その日読んでる室井くんの本の話。


今日みたいに難しい本を読んでいる日もあれば
フラ◯ダースの犬とか読んでいる時もある。

その上、



「なんでこんな悲しい結末にするんだろう…」



と、ぽつりと小声で呟きながら難しそうな顔をしている時もある。


やはり、謎多き少年である。



この日アタシは、放課後に例の向日葵の水やりをこっそりと終え教室に戻った。

普段なら、みんな部活に行くか帰宅したかでほとんど教室に人はいなくなっている時間なのに、その日は違った。