「んで?何よ、なんなのよ。鬱陶しいわね」



目の前の席に座ると、妖艶に足を組みアタシを見据えるさっちゃん。




「・・・心臓がムズムズするのです」

「心臓?」

「そう、心の臓」




あの日から、アタシの心臓はどうも様子がおかしい。




「脳みそじゃなくて?」

「・・・さっちゃん、ヒドイ」




駄目だわ、このセクシー隊長は。

暑さでイラついていらっしゃる彼女に相談できる雰囲気ではないと諦めて、アタシはため息を吐いて机に突っ伏した。


ーーーカタン、




「おはよう」



頭上から、ゆったりとした特徴のある声が響き
アタシは顔を上げた。



「おは、おはよう室井くん!」



左隣の席に、相変わらず長い髪で顔を覆った室井くんがゆっくりと腰を下ろす。



「おはよう室井。珍しいわね~室井が挨拶なんて。しっかし相変わらず暑苦しい髪の毛ね、アンタ」



さっちゃんが眉間にシワを寄せながら室井くんを見る。


それに、ハハとやんわりと口元に弧を描きながら室井くんが机の横に鞄をかけた。



「あ、暑いね今日も!」

「うん、暑いね」



そんな会話を一言、二言交わしながらも、アタシの心の臓はやっぱり心拍数を上げる。