隣の席の室井くん①




さわっっ!!触りたいって!!

出たよ!!触りたい発言!!




クスクス笑う室井くんは
『うん、でも今日は遅いから我慢する』
とアッサリと言う。



「は・・・はぁ」



アタシの顔は、またしても
こうもたやすく真っ赤にさせられる。



うん、


いつもの室井くんだ。



真っすぐドストレートの
室井くんだ。





いつの間にか、室井くんと電話し始めてから時計の針が一周しようとしていた。


『ごめんね、衣装縫ってるの邪魔しちゃって』

「んーん。どうせ全く進んでなかったし」



なんせ袖口と一緒に縫っちゃって、兄貴に女失格みたいなこと言われちゃってるし。



『日吉さん、それ出来たやつ他の人に着させないでね?』

「いや・・・それはアタシにはなんとも・・・」



ていうより、願わくば
室井くんにだけは当たって欲しくない。

アタシの作った衣装だけは。


きっとボロ雑巾みたいな代物になるに違いない。



『うん、でも、日吉さんが作ったやつ違う人が着るのやだ』

「やだって・・・」



そんな可愛く言われても・・・!!

畜生!!せめて人並みに手先が器用ならば・・・!!



『羽鳥くんが着ることになったら、俺、泣くよ?』

「な・・・泣くの?」

『うん、泣く』



泣いてる室井くん・・・
ちょっと見たいかも。


ってか、なんで羽鳥くん?




『そしたら俺、がんばる』

「な、なにを?」

『いろいろ、がんばる』




なんでこの人
電話の向こうで意気込んでるのか。


なにを一体頑張るというのか。



バイト?バンド?



いやいや、アタシの衣装と
なんの関係があるというのか。



やっぱり、室井くんは分からない。
不思議な人だ。



不思議な人だけど
アタシの好きな室井くんだ。


唄ってる室井くんもカッコイイし好きだけど
アタシはこの室井くんが好き。



『今日、日吉さんに電話してよかった』



比べるものじゃないけれど




『実はね、亮介が作ってきた曲の歌詞だけまだ出来てなくて』




どっちも本当の室井くんだけど




『煮詰まりすぎて、いっそのこと相対性理論についての歌詞にでもしちゃうとこだった』

「そ、相対性理論・・・!!」


どんな歌だ。むしろ聞いてみたいけども。




マイペースで
のほほん、とした室井くんが



アタシは好き。




そんな室井くんが、大好きだ。






        *   * *





『そろそろ寝る?』

「うん、もう11時だしね」

『じゃあさ、日吉さん、電話このままで』

「うん?なんで?」

『日吉さんが寝るまで、ギター弾かせて?』

「・・・」

『なんか、今、そんな気分』

「・・・・」




耳元に、


室井くんが奏でる優しい音が聞こえる。


甘く、響く音が
鼓膜を震わせる。


まるで何かを唄うように


アコースティックギターが奏でる優しく、
甘い子守唄を。



アタシが意識を手放すまで


その音は


優しく携帯の向こうから


響き続けていた、






少しずつ、



少しずつだけど




何かが変わりはじめようとしていた。