隣の席の室井くん①




なんか、

知らない人みたいだ。



一度ライブで歌を唄っている室井くんを観たことはある。スタジオでも一度。



眼鏡を外したキタローバージョンじゃない室井くんも
何度も見たことがある。



だけど、


携帯を、機械を通して見る室井くんはなんだか別世界の人のような気がして、急に不安になった。


それがなんの不安なのかはわからないけど

とにかく、胸の辺りにモヤモヤとした何かが広がった。



静止した動画のページの1番下にはコメント欄があって、アタシは思わずそこをクリックする。



―――――@yasuyasu・(1日前)

何これ。マジで高校生?
超レベル高っ!!

―――――@LOVESnakeFoot・(3日前)

ショウかっこいい!!
3曲だけじゃなくてもっと聞きたい

―――――@36KAZU・(3日前)

普通に上手いしカッコイイと思うわ


―――――@99alice・(3日前)

この曲なんて曲?
オリジナル?コピー?
超気に入った
まだ荒削りだけどアマチュアでここまでのレベルはすごい!!


―――――@Hitmi・(6日前)

ギターもベースもドラムも上手い!!
そんで、このボーカルイケメンすぎ!!声もいい!!

下手なプロよりいけてんじゃね?


――――――――――――



そこには、彼らを称賛するコメントが並んでいた。

アタシは全部に目を通すことなく、携帯を伏せた。


彼女なら、本当なら、喜ぶところなのかな。
いや、凄いと思う。
凄いよ。うん、本当凄い。


全部に目を通したわけじゃないけど、誹謗中傷当たり前のネットの世界でここまで称賛されるとか凄いと思う。



けど、


けど、




アタシが知ってる室井くんは窓際で本を読みながら静かに佇む室井くんで


鬱陶しい程に長い前髪で顔を隠し、分厚い黒ブチ眼鏡で教室の背景に溶け込んじゃうような室井くんで


眼鏡を外すと、ちょっと強気で恥ずかしいことをペロリと言っちゃうような天然ストレートな室井くんで




こんなスポットライトを浴びて、歓声を浴びる室井くんは、アタシの中にはまだ馴染みがなくて



なんだか少し、
不安になる。




停止したまま動かないミシンを目の前に、
アタシも携帯片手に停止したまま、ぼんやりと手の中の携帯に視線を落とす。



~♪



急にプルルルと震えた携帯が、僅かな振動と共に着信を知らせる。


ハッとして携帯に視線を落とすと



♪室井くん♪


の文字。



アタシは慌てて通話ボタンを押し耳に当てた。