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母さんにミシンの使い方を教わったアタシは、早速部屋でミシンと向き合う。
ミシンを触るのなんていつぶりだろうか。
多分、あれだ。
中学校の時の雑巾製作が最後だ。
ロクな思い出がないけど、果たしてアタシに
コレを操ることができるのだろうか。
とりあえず、白い糸を手に取る。
「えーっと・・・?まず下糸をセットして・・・?上糸と一緒に・・・?」
なんだっけな。
マズイね。早速もう躓いてるよ自分。
なんてこった。
なんとかかんとか試行錯誤しながらも糸をセットし、布をミシンに固定する。
「うお~どきどきする!」
あとはスタートボタンを押せば自動で縫ってくれるんだろうけど、なかなかどうして緊張しますがな。
いや、しかし押すのよ純!!ここで引いてちゃ女が廃るわ!!
「よし!」
という掛け声と共に
スタートボタンを押す。
その瞬間、
ガガガガガ!!という機械音と共にミシンの針が布の上を進んで行った。
あまりの勢いに、布を押さえていた手が布と一緒に滑っていく。
「ぎゃぁぁぁ!!」
それと同時にアタシの雄叫びが日吉家に響き渡る。
「なんだ!!?どうした純!!」
アタシの雄叫びを聞き付けた兄貴が勢いよくドアを開けて入ってきた。
「兄貴ぃ・・・」
「・・・なにしてんだお前」
涙目のアタシと、呆れ顔の兄貴。
双方の視線はミシンの上に広げられた布。
「・・・どーにかして」
衣装用の白い布と一緒に縫われてしまった自分の洋服の裾をアピールしながら、アタシは兄貴に助けを求めた。
「兄ちゃんはお前を女として認めたくないぞ」
「ほっといて」
大袈裟にため息を吐きながらも兄貴は器用に縫われてしまったアタシの袖と布をハサミで切り離していく。
「だってさ!!ボタン押したら勝手にガガガ!!っつって縫われていったんだもんよ!!」
「純」
「なにさ」
「俺は今、激しく室井くんに問い掛けたいことがある」
「・・・」
「ミシン一つ扱えない女が彼女でいいのかということを全力で問いたい」
「室井くんはそんな器の小さい男じゃないのよ」
・・・多分。
しかし、なんでウチの家族は揃いも揃ってこんなにも室井くんの味方かね。
可愛い娘、妹よりも室井くんの心配かよ。
こんな不器用な不憫なアタシの心配をしておくれよ。
「また室井くん連れてこいよ」
ぱちん、ぱちん、とハサミで糸を切りながら
兄貴はニコニコと笑みを浮かべてその名前を口にする。
「室井くん今忙しいんだよ」
「あ~、バイトとバンドがあるからなぁ。10月にワンマンライブやんだろ?」
・・・なぜにそんなにも詳しいのか。
じっとりと兄貴を見れば
「あ?だって俺、室井くんと連絡先交換してんもん」
「は!!?」
「ちょこちょこ連絡取り合ってるぜ〜」
な、なんだと!?
室井くんと兄貴が!!?
なんだソラ!!いつのまに!!?
「いや~、あのSnakeFootのショウとまさか知り合いになれるなんてなぁ」
「いやいや、兄貴。室井くんは芸能人でもなんでもないからね?」
どんだけ好きなのこの人。
ここまでくると変な心配してくるよ。
嫌だよアタシ。恋敵が実の兄貴とか。
泣けちゃうよ。
