隣の席の室井くん①





「でもそうだよな~室井、亮介と仲いいもんな、当然知り合いだよな~」


羨ましそうに呟く羽鳥くんに


「羽鳥くん、ショウくんのファンなの?」


と、聞けば


「ばっっ!!ファンとか言うなよ!!」


と少し顔を赤らめる。



・・・いやいや
顔を赤らめるようなことですか。



「ただ、かっけぇじゃん、あのボーカル。俺の彼女がファンでさ」

「彼女が?」

「そう、もともとSnakeFootのファンだったのは彼女で、それの付き合いでライブに行くようになったんだよ俺」

「そうなんだ?」


やっぱり、女の子のファンいるよね、そりゃ。


ステージ上の室井くん・・・いや、もといショウは
圧巻的な格好よさだ。



「そしたら、ギターの奴はうちの高校の奴だし、演奏はすげぇし、ボーカルもすげぇし、一気にファンになっちゃってさ」



・・・ファンて認めちゃいましたね。




「なぁ!!頼む!!ショウと会わしてよ!!」

「わわわ」


勢いよく肩を掴まれ思わずよろける。


どんだけ好きなんですか!!


いきなりスイッチが入った羽鳥くんにたじたじしていると・・・



「わ」



背後から、腕を引かれ
アタシは後方にのけ反る。


羽鳥くんの手から逃れた肩を、今度は違う手が支える。



「日吉さん」



頭だけ振り向けば
そこには、前髪と眼鏡で表情が隠れた室井くんが立っていた。





いつもより、少しトーン低めの声でアタシの名前を呼ぶと


「松坂さんが呼んでる」


と、耳元で呟いた。


「むむむ、室井くん!!」


片耳を押さえながら慌てて室井くんから離れようとするも、思いの外ガッチリ捕まれた両肩が逃れられない。


相変わらず無表情でアタシの背後にいる室井くんは


「それと、俺これからバイトだから先に帰るね」

「あ、はい」


もう、頷くしかない。


どうしちゃったんですか、この人は。
学校内でこんなん!!
しかもクラスメートの前で・・・
室井くんらしくないじゃないですか!!



目の前の羽鳥くんも
ぽかん、と目を丸くしている。



そんなことに構わず
室井くんは再び耳元に近付くと


「・・・ヤキモチ妬いちゃうからだめ」


と、低いトーンで呟いた。



かかか、と更に顔に血液が集まっていくのがわかる。


思わず室井くんを見れば
前髪の合間から、少し困ったような室井くんの表情が見えた。


困り顔のままニコリと笑うと


「じゃあまたね日吉さん」


と、室井くんは教室を後にした。